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遊具も花壇アートも歴史も楽しめる!川崎「さいわい緑道」で廃線跡さんぽ

2025.11.20

何気なく公園の続きかしら?と思った場所が、実は歴史と地域の息吹を感じる緑道「さいわい緑道」でした。

2022年4月にもご紹介いたしましたが、この記事では、散策の楽しみとともに、その背景にある鉄道・産業・街づくりの物語をご紹介します。

以前の記事はこちら

ながぁ~い公園ではなくて、道?

南河原公園の目の前にある国道1号線の横断歩道。その先に何やら遊具が見えます。あちらも公園なのでしょうか?渡ってみましょう。

入り口には「さいわい緑道」と書かれた川崎市の看板と、「やすらぎの道しんめい」と書かれた温かみのある看板が2つあります。道?にしては、立派な入り口、そして遊具、なんだか面白そうです!

歩いていくと、石碑があらわれました。旧南武鉄道……と書いてあります。確かに南武線は近くを走っているけれどなぁ?と疑問に思う気持ちよりも、まずこの場所がステキなことといったら……!!

地元住民の方々が丁寧にお手入れした花壇がたくさんあるのですが、その花壇アートは趣向が凝らされていて、それぞれがとてもステキなんです。

池やベンチやテーブルにいたるまで、それぞれがひと工夫、ふた工夫が施されているのも楽しい見どころなんです。散歩にも一息つくにもぴったり!なはずが、もっと見たい!という気持ちが勝ってしまい、どんどん足が進んでしまいます。

さいわい緑道という名称ではありますが、ここの町名である神明町の名前を冠したやすらぎの道しんめいという愛称がだんだんしっくり感じてきました。さあ、次へ行きましょう!

……と、今までの雰囲気と違う道、突然のタイルアートの出現です。踏切と列車、そして「川崎河岸」駅という駅名が見えます。こんな名前の駅、あったかしら?

そこから少し歩くとさいわい緑道の終点となりました。

緑道になる前の記憶、そこは終着駅

「川崎河岸」駅。けれども、この駅は地図にありません。不思議に思って調べてみると、かつてここには「川崎河岸」駅という貨物駅が存在していたことがわかりました。

多摩川で採取した砂利や建設資材を運び出すための、貨物専用路線だった川崎河岸線。
1927(昭和2)年に南武線・「矢向」駅から分岐した川崎河岸線の終着駅が、「川崎河岸」駅だったのです。

当時、この付近には製綱や機械関連の工場が並び、線路の終点では河岸に船を横付けし、鉄道と船舶を結ぶ輸送拠点でした。
しかし、高度経済成長の時代、物流の中心はトラック輸送へと移行し、砂利採取が禁止されます。

この線路の使命を終え、1972(昭和47)年には廃線となりました。
その跡地が、地域の人々の憩いと緑の空間「さいわい緑道」になったのです。

ああ、なるほど!先ほど見た石碑は、その史跡を残したものだったのですね。

先ほどたどり着いたさいわい緑道の終点は、ちょうど川崎市の端にあたる場所。ここから先の横浜市側ではすでに宅地開発が進み、線路跡は完全に建物の中に消えてしまいました。川崎市側だけが緑道として整備・保存されており、街の境界を越えて、線路の名残を今に伝える貴重な空間となっていたのです。

この一帯を歩いていると、かつて「矢向」駅から貨物列車がゆっくりとこの道を抜け、多摩川河岸に向かっていた姿を想像せずにはいられません。地図をご覧になれる方、いらっしゃいますか?「矢向」駅からここまでの地図を見ると、線路はもうないけれど、何となく指でたどることができ、不思議な気持ちになりませんか?

河原町団地と終点の広場は緑道が語る「街の変遷」

来た道を戻り、最初にいた南河原公園へ戻ってきました。

反対側にも線路の跡、さいわい緑道は続いていますが、景色はがらりと変わります。やはり整備はされていますが、どんぐりがたくさん落ちている道です(図工で使うどんぐりは、ここへ拾いにこようっと!)。

そして巨大な建物群にたどり着きます。世にも有名な建造物、河原町団地です。

その独特な構造と圧倒的なスケール感に、思わず見上げてしまう人も多いはず。ここもまた、かつての工場跡地を再開発して生まれた住宅団地であり、鉄道が走っていた時代の産業の名残を感じる場所です。

さらに進むと、南河原保育園の前に広がる広い公園へと出ます。以前、わが子と遊びに来た時は公園だと思っていたこの場所も、実はさいわい緑道の一部だったと初めて気が付きました。

ここがちょうど旧「川崎河岸」駅の構内にあたる場所で、かつては貨物の積み下ろしがおこなわれていたといわれています。現在はその広さを活かした広場として整備され、緑道の終点にふさわしい広々さです。

目の前には国道409号線、そして多摩川の土手。鉄道が運んだ砂利が流れ着いた川の景色を見ながら歩みを止めると、廃線の跡に生まれた緑道が、産業史跡と現在を結びつけ、タイムスリップしたような不思議な気持ちにさせてくれました。

エリア情報

さいわい緑道(やすらぎの道しんめい)

住所:神奈川県川崎市幸区神明町
アクセス:JR南武線「矢向」駅から徒歩約10分