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「新川崎」駅で8代目が手掛ける地産地“笑”の「しんぼりファーム」

2025.12.06

2021年11月にもご紹介いたしました「しんぼりファーム」さん。今回も「おいしい野菜に出会えました」とご紹介するはずが、まさかの展開が待ち受けていました。

以前の記事はこちら
https://www.house.jp/areainfo/kawasaki/shopping/market/kawasaki-saiwai-shinborifarm-w058-20211127/

直売所撮影のはずがまさかの展開

無念、「今日はお休み」というお知らせを発見です。取材はまた後日ですかね。
お仕事中、そっと声をかけ、撮影申し込み。

「自販機の写真撮っていいですか?」
「うんうん、どうぞ!来週はやるからね。自販機はここからぐる~っと回って行ってもらえるかな。見てってね!」と作業する方が手を止めて優しく答えてくれました。

道路沿いの自販機にたどり着くと、自転車にのっていたご常連さんでしょうか。

「ありゃ~、今日はお休みか~」
「すいません、来週はやってますので~」
「ううん、いいんだいいんだ、また来るね~」

と自販機で大根を買って、過ぎ去っていくお客さんを見送る男性のポケットから見えたのは……私が先ほどの方に渡した取材願いの手紙とハマサキマガジンステッカー!

「そうでしたか、あれは私の父です。どうも。……あ、写真、撮ります?」
「ありがとうございます。あの、新岩城さんのイチゴ大福ってこちらのイチゴだって伺ってきたんです。」
「そうですよ。イチゴは来月、クリスマスに間に合うかどうかってところで……見ます?」「お願いします!」

と、自販機の横の秘密の通用口がすっと開く。まさかの取材開始です。

優しい語り口に隠された情熱

その方こそ、当代(8代目)しんぼりファーム代表、新堀智史さんです。
川崎市のイチゴ農家は15件、その最南端にあるのがしんぼりファーム。ハウス栽培のイチゴとトマトが主力商品です。

今シーズンのイチゴは紅ほっぺとほしうららが登場予定です。
おなじみ静岡県からやってきた紅ほっぺ、「新岩城さんに納品するのがこれ。」

……かわいいお花が咲いていて、まだ実は成っていない、と分かっていても、ついつい探してしまいます。

それは、私の重大な勘違いのせいでした!
この農園は、観光農園ではなく、直売農園です。
「イチゴ農家さん=ビニールハウス発見=イチゴ狩り」という勝手な思い込みが刷り込まれていました~~!

「そうなんです。うちはイチゴ狩りはしていません。観光農園ではないんですよ。毎年間違えていらっしゃる方はいてですね……。」
ごめんなさい!みなさんはご承知かとは存じますが、念のため、注意喚起をいたします!

一方、長野県からやってきた、ほしうらら。私は初めて聞いた名前です。
それもそのはず、川崎でしんぼりファームともう1軒だけなのだそうです。どんなイチゴができるのでしょう。楽しみに待つことにしましょう。

おや?マルチ(苗床の上のシート)はおなじみの黒ではなくて紫と茶色。苗床の温度管理の
ためなのだそうです。初めて見ました。

お次は、トマトのハウスへ。入るとトマトの青く、みずみずしい香りがフワ~っと漂ってきます。思わず、ゴクリと喉が鳴ってしまいました。

これは長段栽培というのだそうです。トマトのツルが上に伸びて、滑車からぶら下がり、何段にもなっているのが見えますか?
収穫時期が10月から7月まで長い時期の収穫ができるんですって。

この画像の品種はティエロ。

お話を伺っていて思うこと。
とてもわかりやすく、平たい言葉を使って説明してくださるのです。

「小学生たちが社会科見学でうちに来るんですよ。」
なるほど!

そして、大変に情熱家だということ。
自ら探し当てたイチゴ栽培の師は、なんと京都の方だそうです。
「ハウスは全部、僕の代で建てたんですよ。最初は19歳の時で。まだ学生でしたねぇ。」

学生時代から現在までの熱量、とんでもない火力です。
自ら飛び込んでチャレンジしていく志の高さを感じずにはいられません。
「そうかなぁ。僕の周り、そういうタイプの人が多いんですけどねぇ。類は友を呼ぶのかな。」
高い志や目標を持つ人は、それに共鳴する人々と自然と繋がりやすくなるのでしょうね。

農家は地域の伝承者

露地栽培の、のらぼう菜。
「あきる野と、川崎の菅が発祥の地なんですよ。それ以外では、かき菜って聞いたことあります?」
ああ!それならわかります!

北条政子の妹が、花嫁道具として油の原料になるのらぼう菜の種を川崎の地へ持ち込んだといいます。なんと鎌倉時代からの伝統野菜!

こちらの畑だけでなく横浜にも畑があり、さまざまな野菜を生産なさっています。
川崎で作っているのは、毎日、細やかな世話が必要なイチゴ・トマトがメインなんだそうです。

お話は地域の歴史へも膨らみます。
「この先に、夢見ヶ崎ってあるでしょう?本当は江戸城をあそこへ建てるつもりだったあの辺だけが陸地で。」

室町時代、太田道灌が鷲に兜を取られる悪夢を見て、築城断念したという話です。
(恥ずかしながら初めて知りました。今度、夢見ヶ崎動物公園に行ってみようっと。)

「逆にここは、海抜0メートル以下の地域。掘れば塩水が出る。」

まさか、まだ、ここに現役の井戸があったりします……?

的中です!井戸ポンプ発見!

お父様は「綱島温泉と同じ成分だよ。毎日使ってると手がすべすべになるよ~。」と笑って仰います。
(横浜の綱島温泉は、かつて東京の奥座敷といわれた温泉街でした。今も数件温浴施設が残っています)

一年中17度の鉱泉です。
11月現在は……うわっ、びっくり、あったかい!
このように野菜を洗ったり、道具の手入れに使っているそうです。お風呂に浸かる大根さんたち、気持ちよさそうです。

代々続いている農家さんは、もはや史跡という風情すら感じます。

さらに言えば、この方は無形文化財なのではないでしょうか。

現代の農業に積極的な研究者としての側面。
地元の小学生たちに地域の農業を伝える伝承者という側面。

「あとは、農業の後継者、ですよね。」
と仰る当代。
農業研修生の受け入れをする指導者としての側面。
農業の行く末を考える、現代を生きる農業家としての側面……。

この記事に書ききれないほどのたくさんのお話を伺い、大変貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。
そして、仕事の手を止めてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
(ICT活用のお話、学生時代のお話、本当は全部記事にしたかったです。)

『幸区のステキな直売農園、おいしい野菜をご紹介!』という記事構想は取材によってだいぶ違うものになってきてしまいました。

「いやいやいや、いいんです、それで。気軽に買いに来て欲しい!直売農家ですから!あとそれに……」
それに?
「メディアに出る時は『しんぼりファーム 野菜 嫌い』でよく検索がヒットしますし。」
え??
「僕、野菜、苦手で。」
野菜嫌いというまさかの側面を拝見して、取材を終えました!

と仰るほど、しんぼりファームさんの野菜は、そんな野菜嫌いの方にもおいしいと感じて貰える野菜ばかりなんです。

……あっ!思い出しました。我が家の息子、生のスティック人参が大好きなんですが、ファースト人参は、しんぼりファーム産でした!う〜む、納得です。

とても身近な場所に、作り手の顔が見える野菜との出会いがあります。農園直売所やお近くのスーパーで、ぜひ、そんなステキ体験を味わってみませんか?

エリア情報

しんぼりファーム

住所:神奈川県川崎市幸区南加瀬5-34-10
アクセス:JR湘南新宿ライン「新川崎」駅から徒歩約28分、川崎鶴見臨港バス、東急バス「樋橋」から徒歩約1分
駐車場:農場入り口のスペース
TEL:044-588-2806
営業時間:※イチゴ狩りはしていませんのでご注意ください。
①直売所:ビニールハウス入口の専用スペースにて、週2回(火曜・土曜)の14:00から販売
②自動販売機:ビニールハウス入口付近に設置
③スーパー:グランツリー、サミット、イトーヨーカドーなど
④新岩城菓子舗:コラボ大福「イチゴ大福」「トマト大福」を季節限定販売
インスタグラム:@shimbori_farm
ブログ:https://ameblo.jp/shimbori-farm/